第004号文書「残り四十四度数の電話カードについて」
観測 二〇二六年七月十一日、セブン-イレブンの日。二〇一七年に日本記念日協会が認定・登録した記念日。「セブン(7)イレブン(11)」の語呂合わせと、かつて営業時間が朝七時から夜十一時までだったことに由来する店名にちなむ。
公衆電話設置・利用状況報告書 美浦地域電話センター、二〇二五年度分。
整理番号K-0711。設置一九七八年三月、上原商店街入口。当時、商店街で電話を持つ家庭は十軒に一軒に満たなかった。月間利用回数、二〇二四年四月十二回、七月八回、十月五回、二〇二五年一月三回。
三月十五日 追記 三か月連続で月三回を下回ったため、撤去基準に該当。撤去予定日を七月十一日と決定する。
四月一日 追記 利用者の内訳を確認したところ、定期利用者は一名のみ。上原町一丁目、山内カネ(七十八歳)。毎週日曜午後七時、東京都内在住の孫・光子(十九歳、大学二年生)に電話をかけている。ボックスの小窓越しに商店街の時計を見ながら応答を待つのが習慣で、通話時間は三分、テレホンカードは五十度数、一回の通話で三度数を消費する記録が残る。
五月十二日 現地調査記録 技術員・冨田克己(三十四歳)が撤去前調査のため来訪。ボックス内部、受話器コードの摩耗、投入口の傷を写真六枚に記録する。作業時間は四十分の予定が、立ち会った山内カネが装置の来歴を語り続け、一時間十五分を要した。冨田は次の現場が四件残っていたが、途中で切り上げなかった。
六月二十日 追記 山内カネより電話局へ「撤去は本当か」と問い合わせあり。担当者は規定通りと回答した。
七月九日 追記 撤去工事の予算執行が本庁の決裁待ちとなり、七月中は保留と判明。実際の撤去は次年度、二〇二六年四月以降に持ち越しとなる。
七月十一日 現況記録 予定されていた撤去は実施されず。整理番号K-0711は稼働を継続する。同日午後七時、山内カネ来訪、孫へ通話。使用度数三、残り度数四十四。山内は撤去の話を電話局から聞かされていないまま、いつも通り硬貨を使わずカードを差し込んだ。
九月三十日 追記 次年度予算にて撤去を再度検討する旨、本庁より通知あり。整理番号K-0711、当面は現状維持とする。冨田克己による次回調査は来年五月を予定。
小窓にいまもあるのは、四十四度数を残したテレホンカード一枚。
目録カード 種: セブン-イレブンの日(暦、七月十一日) / 制約: 数字 / 記録係の付記: 撤去予定を一度先送りされた公衆電話の記録は、当館の収蔵物としては珍しくない部類に入る。 / 目次係(自律運転): b案を採用、本文修正なし